ミャンマー進出のメリットとデメリット
本ページは、ミャンマー進出のメリットとデメリットをそれぞれご紹介いたします。
ミャンマーは、軍事政権の支配により2011年まで鎖国状態であったために、ASEANの中でも経済発展で後れを取っている国で、いまだ発展の伸びしろが大きく残っていることから「アジアのラストフロンティア」と呼ばれ、新たな市場や製造・物流拠点として世界中から注目を集めています。
これからミャンマー進出を視野に入れている方は、必ず知っておきたい内容となっています。是非ご覧ください。
目次
- ミャンマー進出の6つのメリット
- メリット1安価な労働力
- メリット2好立地なロケーション
- メリット3将来性ある5千万人の市場
- メリット4豊富な資源
- メリット5外国投資への優遇処置
- メリット6言語上の障害が低い
- ミャンマー進出の6つのデメリット
- デメリット1管理者層の人材が少ない
- デメリット2極端な電力不足
- デメリット3未成熟な法整備
- デメリット4大幅な為替変動
- デメリット5企業の不透明な財政管理
- デメリット6テナントの賃料が高い
ミャンマー進出の6つのメリット
ミャンマー進出メリット1安価な労働力
ミャンマー進出への大きな魅力の一つは人件費の安さです。
下のグラフからもわかる通り、ミャンマーのワーカー賃金の安さはアジア随一です。
また、法定最低賃金に関しても4800Kyat(350円程度)/1日と非常に低い設定となっています。
このような環境下から、労働集約型製造業にとっては大きな利点がある国で、多くの縫製工場がすでに進出を果たしています。また、生産された製品は日本にも多く輸出されています。
近年、ミャンマーの大学はIT教育にも力を入れています。
ミャンマーのコンピュータ大学トップのUIT(University of Information Technology)では日本の青山大学など5か所の大学と提携しています。また、施設内に富士通の研究室を構えるなど、IT教育の強化を日本の大学や企業と共に行っています。
このような、将来性があり比較的安価な労働力の獲得を目的にITのオフショア開発会社なども多くミャンマーに進出を果たしています。
アジア各国で人件費が高騰する中、今後より一層ミャンマーは注目されるものと考えられます。
ミャンマー進出メリット2好立地なロケーション
ミャンマーの立地は世界1位と2位の人口規模を誇る、中国とインドに挟まれた場所にあります。それ以外にも人口規模8位のバングラディッシュやタイ、ラオスとも国境を接しており、国境を接している国の人口だけで30憶人以上にもなります。
このような立地条件から、ミャンマーは製造拠点や物流の拠点として注目をされています。現在、インド、ミャンマー、タイとを結ぶ東西経済回廊の整備や2021年開通予定の高速道路の開発が進んでおります。また、中国とをつなぐアジアハイウェイの整備も進んでいます。
このように道の環境は徐々に整備されつつあります。また、ハンタワディ空港、ダウェーの港、ヤンゴン・マンダレー間の鉄道など多くの開発が計画、実施されております。そのため、製造拠、物流拠点としての魅力は今後より一層増して、ミャンマー進出する企業が増えていくものと考えられます。
ミャンマー進出メリット3将来性ある5千万人の市場
2018年度、ミャンマーの経済成長率は 6.4%に達しています。ちなみに日本の同年の経済成長率は0.8%です。
約50年にもわたり、ミャンマーは国際経済から隔離された状態に置かれていました。しかし、2011年の民政化を受けて、欧米諸国からの経済制裁が解除されたことを契機に、ミャンマーへ海外からの開発援助や直接投資が大量に流入してきています。これによりミャンマーは2011年以降、毎年5%以上の驚異的な経済成長を果たしています。
このように経済成長が続くミャンマーでは高価な携帯電話や新車なども爆発的に販売台数を伸ばしています。
携帯電話に至っては2013年度は20%(1000万台)以下だった保有率が、外資への通信事業開放などもあり、2017年度以降では100%(5600万台)以上へと急速に増えています。また、新車に関しては2016年は2300台だった販売台数が中古車の規制などもあり、2019年には21,000台と9倍以上に跳ね上がっています。また、このような結果へ大きな影響を与えているのはミャンマーへ進出している日本企業です。
日本の住友商事とKDDIはミャンマーの携帯通信キャリア最大手のMPTと提携をしており、ミャンマーの通信環境の改善に多大な影響を与えています。また、新車業界においては2019年に日本のスズキ自動車がシェア1位、トヨタ自動車がシェア2位を取っています。この他にもエースコックやヤクルト、王子製紙など多くの日系大手の会社がミャンマーの国内市場をターゲットに進出を果たしています。
このように、ミャンマーは現在と将来において魅力ある市場を持っており、その市場に対してすでに多くの日本企業がミャンマー進出へと動き出しています。
ミャンマー進出メリット4豊富な資源
ミャンマーでは海洋資源として、天然ガスや石油が産出します。これらは主に中国やタイへ輸出をされており、特に天然ガスはミャンマーの輸出額の中でも大きな割合を占めています。この分野への外資の投資も盛んで、外資での探鉱開発なども行われています。
内陸資源としては金、銅、鉛、プラチナ、レアメタルなどの金属資源も豊富です。さらに翡翠やルビーなどの宝石資源においては世界有数の産出国になっています。
また、国土の約50%が森林地帯で、手付かずの木材資源も豊富にあります。特に質が高いチーク材が取れることで有名で、日本にも多くのミャンマー産のチーク材が輸出されています。ゴムの木も豊富で、天然ゴムの生産量は2018年では世界10位にもなっています。
このように技術次第で製品化できる資源が豊富にミャンマーにはございます。
ミャンマー進出メリット5外国投資への優遇処置
ミャンマーには外資の投資を呼び込むための優遇処置があります。対象は製造業や農業、宿泊業など様々です。
優遇処置の内容は経済特区外と経済特区内で少し異なります。
経済特区外の場合には外国投資法に基づき、優遇処置が規定されています。主な内容としては下記です。
- 法人税の免税(開発地域によって3年・5年・7年のいずれか)
- 投資事業の施設建設時の資材輸入時の関税免税
- 輸出用製品の製造に使用される原材料や未完成品の輸入時の関税免税
- 最大70年間の土地の賃借権 等
経済特区内の優遇処置の主な内容は下記です。
- 法人税の免税(経済特区のエリアによって5年又は7年)
- 法人税の50%減税(免税期間後の5年間)
- 投資事業の施設建設時の資材輸入時の関税免税
- 輸出用製品の製造に使用される原材料や未完成品の輸入時の関税免税 (一部経済特区エリアは除く)
- 最大75年間の土地の賃借権 等
このように様々な優遇処置が外資投資向けに整備されています。このような優遇処置だけでなく、外資投資への規制緩和も行われており、投資を呼び込むための施策が政府主導で行われています。
今後、より一層外資企業がミャンマー進出および事業展開がしやすい環境になっていくと考えられます。
ミャンマー進出メリット6言語上の障害が低い
ミャンマーは60年以上もの間、イギリス領であったために英語を話せる方が非常に多くおります。大学の一部の教育も英語で行われており、大卒者の多くが英語を話すことが出来ます。
また、国内では日本語ブームが起きており、2018年7月のJLPT(日本語検定)の受験者数は1万2千人にまでのぼっており、その数も年々増えています。
そのため、日本語を話せる人も比較的容易に雇うことが出来ます。
このような環境から言語面での障害は非常に低いといえます。また、9割以上の方が仏教徒のため、温和で真面目な方が多いです。このように、日本人に似た気質の方が多く、性格面においてもコミュニケーション上の障害は非常に低いといえます。
ミャンマー進出の6つのデメリット
ミャンマー進出デメリット1管理者層の人材が少ない
軍事政権下で企業活動が制限されていたミャンマーでは、一定のビジネススキルを有する人材が不足しており、特にマネージャー層は需給が逼迫しています。これは2019年にJETROが行ったミャンマー進出企業向けのアンケート調査でも経営上の問題点の5位に入っています。
このような環境から企業毎に様々な工夫が行われています。ある日系進出企業は日本国内でミャンマー人の実習生や技術者を採用し、日本の技術や組織で働くことを教育、ミャンマーの拠点へ幹部人材として派遣するといったことを行っています。また、すでに様々な国に拠点を持つ多国籍企業は他のアジアの拠点で育成した人材をミャンマーに派遣しております。
このように途上国ならではのこの問題に対して、各企業が自社にあった形で対応を行っています。
ミャンマー進出デメリット2極端な電力不足
ミャンマーは特に電力不足が深刻です。ミャンマーの年間の発電量はベトナムの5分の1程度で、世帯電化率は50%程度と東南アジアの中でも極端に低いです。このような状況から進出企業の工場や住居などではジェネレータがほぼ必ず設置されています。
しかし、経済特区は例外です。日本とミャンマーの共同出資で運営されているティラワ経済特区では独自の発電所から電気が供給されており、基本的に停電は起きません。また、上下水道の処理施設や通信網なども配備されており、国際水準を満たす工業団地となっています。
このように、国全体としては電気不足ではあるものの、安定的な電気の供給を必要とする企業の受け皿はすでに準備が整っています。
ミャンマー進出デメリット3未成熟な法整備
ミャンマーの各法律はまだまだ整備段階にあります。法整備が進んでいる先進国に比べて、ミャンマーのような途上国では頻繁に新たな法の施行が行われています。また、法律上規定されていない部分も多くございます。そのため、ミャンマーに無い技術や物で事業を行う傾向が強い外資企業はこのような未整備の法の環境に振り回されます。
このような環境下においては先立って類似の事業を実施している企業やそれをサポートしたコンサル会社などより話しを伺うのが近道です。
また、長年ミャンマーで支援を行っているコンサル会社には様々な企業の進出ケースの情報が累積しています。そのため、全く前例がない分野においても新たな方向性につながるアドバイスなどを得られる場合がございます。
ミャンマー進出デメリット4大幅な為替変動
ミャンマーチャットの対米ドルレートは年々チャット減価で推移しています。また、その減価の幅も非常に大きいです。2014年度に1USD= 984Kyatレートが2019年度には1,518Kyatまで減価しています。これは大きな貿易赤字に伴い、米ドルが国外へ流出していることが要因の一つと考えられます。今後、工業化が進み付加価値の高い製品を輸出できるようになれば解決できると考えられるが、短期的な解決は難しい問題です。
そのため、企業としても可能な限りドルで資金を貯め込む等の工夫は必要と考えられます。
ミャンマー進出デメリット5企業の不透明な財政管理
M&Aの目的は事業開始までの時間削減や人材確保、市場のシェア獲得など様々あるかと思います。このような目的でM&Aを行う際に企業の会計帳簿のチェックは必要不可欠です。しかし、ミャンマーでは多くの企業で2重帳簿などが行われており、正確な財政状況の把握が容易ではございません。
このように不透明な帳簿で事業を行っている企業が多いこともあり、2016年に取引が開始されたミャンマーの証券取引所では上場企業が5社という数にとどまっています。
現状、ミャンマー国内でも税務申告のオンライン化や汚職に対する規制などが進んでおります。そのため、以前のように帳簿偽造で税金逃れをすることが難しい状況になってきております。今後、近い将来には現地企業の財政管理状況は改善されると考えられます。
ミャンマー進出デメリット6テナントの賃料が高い
外資企業が集まるヤンゴン中心部は家賃が非常に高いです。 2020年8月に弊社で調べた、オフィスビル3ヵ所の1平米辺りの賃借は下記です。
- Sakura Tower 30 USD/ヵ月
- Pyay Garden 32 USD/ヵ月
- Sule Square 45 USD/ヵ月
この3ヵ所の1平米辺りの平均賃料は35.6 USD / ヵ月です。これは日本の新横浜エリアの家賃相場 35.1 USD / ヵ月 とあまり変わらない金額です。 これら3ヵ所は好立地で設備も行き届いたオフィスビルで、大手外資企業ばかりが入っているテナントではございますが、非常に高額です。
このような環境から、進出されている企業の方々は様々な工夫をされています。 その工夫の一つとしては住居、オフィス、倉庫の3役をこなせる大きさの一軒家を借りるといった方法です。
ヤンゴン市内では大きな一軒家が賃借物件として多く出ており、その金額やサイズも様々です。1平米 4 USD/ヵ月 程度の家賃で豪華な一軒家を借りることもできます。このように毎月掛かる固定費の削減はビジネス成功できるかどうかを左右する重要なポイントです。
進出の折には様々な事例を不動産業者や進出コンサルの方に伺われるのが良いかと思います。